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失格

小学生の低学年の頃
徒歩で小一時間かかるところに学校があり
近所の皆で班を組み、行きは毎日 集団登校で
帰りはそれぞれでした。

大抵はクラスメイトや近所の友達と連れ立って帰っていましたが
独りきりになることもしばしばで
思えば
私の妄想癖は、その時に培われたのかもしれません。


学期末になると、どういったわけか
お道具箱と呼ばれていた、つまりは
机の中にしまってある
ハサミやのりやセロテープなんかの類を一緒くたにした箱を持って帰る決まりになっていて
それがとても重く、 7才 の子供が小一時間かけて持って歩くには…なかなかに骨でした。

当時の私のニューロンがどうなっていたのか謎ですが
" これを家に帰るまでずっと片手で持ち続けられたなら
初恋のあの子に好かれるかもしれない。

しかも利き手じゃない左手で ! "

とかいう理由のわからない設定を課し
ものすごいストレスを感じながら、独りとぼとぼと帰りました。


結果。

家まであともう少し。というところで
自分に課した謎な試練の謎さに呆れ
ひいては
謎な試練を課した謎な自分に呆れ
こんな事とあの子は關係ないやん。と気付き
一皮剥けた感を得たと同時に…お道具箱を右手に持ち替え
今の今まで感じていた強いストレスから開放された爽快感に喜びながら
喪失感というものを初めて味わった瞬間でもありました。

どうもこんばんは。motomanです。

ただひたすらに作業をしていると
頭の中が飛躍し
何でもない、遠い日の事をぼんやりと思い出したりします。
思えばもう
30年 近くも昔の話なんだなァ。などと
色々と感じるところがあるものです。

そんな何でもない今日という日
私はまたも自分によくわからない設定を課しました。

今日中に進行中の全ての作業に一段落つけられたならば
例え湯呑み 1つ であれ全精力を傾ける。と言った
岡部 嶺男の気高い姿勢に近づけるのではないか。と
何となくそう思ったからです。

34歳 不詳 私。
妄想癖は治らないどころか加速しているように思えます。

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次回の普限窯の一の間に詰める為のものを成形出来る時間は
泣いても笑っても今日まで。でした。

先日 挽いたものを全て削り切れれば
一皮剥けれるかもしれん ! と
微妙な乾燥加減の 80個 と対峙する事となりました。

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と、その前に
先にやっておかねばならぬ雑用を済ませ
釉掛けをし、電気窯のスイッチをオン。

何だかんだと既に陽が暮れました。

流石の私クオリティです。

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削りは好きな工程ではあるので
何の気無し。
ひたすら削り続けました。

今回の一の間も前回同様、低温焼成で備前風なものを狙うので
赤土がほとんどです。

炭桟切をする時、炭が棚の上にきちんと残るよう
壁の役目を成す、火囲い ( って言うんですかね ? ) 用として
それなりに背の高いものが必要なので
今回はこのような花入を多く作りました。

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久々にこの赤土も使いました。
熊野赤土というもので、これまた変わった土で
練ると
アメリカのガムですか。ってくらい
妙な粘り方をする土で、色も変わってます。

挽き易さはあるし、削り心地も良いので
この土に合った焼きが決まれば
今後も使っていきたいと思える土です。

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今回は泉州の土がほとんどです。
釉を掛けるものと焼き締めるもの。
その両方を試します。
炭桟切でどういった景色がつけられるのかも、また楽しみです。

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もうちょいで削り終える。という頃
ラジオから
おはようございます。とかいう
空気の読めない挨拶を切り出す輩が居ました。
その後のヨーデルにもイラッとくるほど
なかなかのストレスっぷりでしたが。

何とかやり切りました。

これで私は一歩
岡部 嶺男の気高い精神性に近付けた事でしょう。

カチカチになった腰を上げ、冷えきった手足を引き摺るように作業場を後にし
車に乗ってはよ帰ろ。と思ったその時
足下に 1つ 。
乾燥状態が最も遅かったから。と
外に出したまま忘れていた大鉢が目につきました。

肩にカバンをひっかけ
帰る気しかない私は
数秒 迷った挙句
それを見なかった事とし、そっと車に乗り込みました。

神に問う。
無抵抗は罪なりや?

堀木のあの不思議な美しい微笑に自分は泣き、判断も抵抗も忘れて自動車に乗り
そうしてここに連れて来られて、狂人という事になりました。
いまに、ここから出ても、
自分はやっぱり狂人、いや、廃人という刻印を額に打たれる事でしょう。

人間、失格


流石の私クオリティです。

近づいたと思った岡部 嶺男が
私を見て苦笑した気がしました。

結果。

こんな時間になりました。
とどのつまり
今から寝てまた作業場へ行くのだから
つまるところ
家を出る時間が遅くなるのは火を見るより明らかで
言わずもがな
非効率的であったのではないかと
そう言えなくもないですが
大事な事は
目標を達成したか否かで
いや
それも
達成してなかったわけで
何がどうアレだったのか
よくわからないので
明日というか
今日やらねばならない事に備え
ブログなんか書いてる場合か。
ちゅー話で。

寝ます。


因みに
私の初恋のあの子は
学年末に
引っ越してしまいました。

私が不甲斐なかったせいです。

流石の私クオリティです。

人間失格

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by t_durden | 2014-10-29 06:49 | 陶芸 : CeramicArt