普限窯 窯焚き ~ 火止め
最近はちょっと落ち着き、作業場で作業する時間が増えてきました。
しかし
気温とは裏腹に…肌寒く感じるのは
風邪気味 ? いやいやまさか。
これが天見のカです。
恐ろしや。
どうもこんばんは。motomanです。
内容が濃過ぎ、真面目に書けばおそらく…
1万文字 くらいは楽に書けてしまいそうなところが怖いので
こんな感じでした的なアレで書いてみようと思います。
先日の記事と少し被りますが、火入れの様子です。
炎を撮っている人を撮りたくなるのは人の常です。
何をそんなに必死に炎の写真を撮るねん。と思われそうですが、目の前に炎があると
なりふり構わず撮ってしまいますね。
私も撮られてしまっていたようです。
もうすでに何時間経過した話か忘れましたが。
たぶんこの頃は… 1回目 の引き出しに向け、昇温させていた頃です。
今回は九谷チームが主導で、寝る間を惜しむように窯焚きに没頭していました。
私も負けじと ? 焚き方の切替えポイントなど、
気になるところは全て目にしたい。と足しげく通いました。
今回は引き出しが多く、その数 26本 。
焼成時間は 5日間 と、普限窯にしては最も短いので
大壺など、棚前に置いた品にしっかりと景色がつくよう
とにかく熾を溜めてはスコップで飛ばし、ぶつけてはまた熾を溜める。というのが基本的な流れで
雰囲気は還元を保ちつつ、 1210℃ あたりでキープし続けました。
木蓋を落とし込む度に熾の量をチェックし、溜まっていればとにかく飛ばす。
だいたい 1時間半 くらいのスパンでした。
そしていよいよ 1回目 の 引き出しタイムです。
わくわくします。
ほな いこか~ と、小山さんも楽しそうです。
先ずは小山さんの花入から。
熾床を作り、その上に寝かせて木蓋する事 1クール 。
炉内温度を取り戻した後、ステンレスの棒を突っ込み
品を引き出します。
この光景はいつ見ても興奮しますね。
もちろん
引き出しが全てではありませんから、棚や火床の品もしっかりと焼き上げなければならないわけですが
半分はこの為に焚いてきたようなところもありますので、やはりテンションが上がります。
小山さんが引き出した後、もう一度熾床を奇麗にならし
私の品を寝かせます。
それから 1クール 。
自分の品の引き出しです。
炉内で品を持ち上げ、釉を動かします。
焚き口付近は 1280℃ 近くあり、ブ厚くかかった釉が見る見るうちに
動くのがハッキリとわかります。
あとから確認したところ、 約50秒 ほど粘り
釉が良いところまで動くのを待っていました。
持ち上げて数秒で大きなしずくが回り込んで来て
これを引き出すべきか…もうちょっと粘るべきか悩みましたが
次を待つ事に。
2つ目 の大きなしずくが回り込み、またも選択に迫られたのですが
もそっと下から上に流れる釉が欲しかったので…と言うか
そのスパンがあまりに短くてパニックになったと言うか
もったいねえ ! と思いながら、まあ
次で出す事にしました。
3つ目 のしずくが溜まり、今です ! と頭の中で叫び
棒を引きつつジリジリと退がりました。
しずくがしっかりと残り、これは落とせねえ !
絶対に残すのです ! とテンションが上がってしまいました。
小山さんも
それ絶対落ちずに残る ! 絶対落とすな ! とプレッシャをかけられ
引き出し最中で品を落とすという、海南事故が頭をよぎりましたが
無事に棚板の上まで移動させる事が出来ました。
棚板に着地。
取り敢えず一安心です。
そこから品を立て、棒をゆっくりと引き抜きますが
熱で棒が曲がり、首あたりの径が意外と細く
なかなか抜けません。
トングでサポートしてもらい、引き出し完了です。
時間の経過と共に、色味が浮かんできます。
ピョロッと垂れた釉もしっかりと残り、急冷されていきます。
品が冷え、そのものの色味が露わになり
どんどん黒くなっていきます。
形としては、古来からある砧形を基本とし
現代を生きる私なりに変形した形としました。
胴から足下にかけて少し絞った形にしたのは
胴の最も径の大きい部分を境に
それより上は釉が上から下に流れ
それより下は釉が下から上に流れるようにしたもので
結果的に言えば、狙いは達成できた事になります。
手応えと反省はその場で。
小山さんの経験上、引き出した品は
引き出してすぐに 85% ほど
残りの 15% の色味は、 24時間 経過後あたりに浮かんでくる。と言います。
陽の下で見ると色々な色が見えてきますし、その楽しみは後日。という事ですね。
コテコテにのった釉が急冷され、動きを止めて留まっています。
人為的に釉をどこまで操作出来るのか。
これは引き出しのテーマであり、どこまで可能性があるのかは
これからの経験次第。という事になります。
油絵のような濃厚で重厚な色がうっすらと浮かんできました。
黒土の品を引き出した事自体が 2度目 ですが、青味が出たのは初めての事です。
1回目 の引き出しが始まったのが、焼成開始から 98時間 の事。
熾を溜めては飛ばす作業に戻ります。
火床には沢山の引き出しを待つ品が並んでいますし、天井には温度計。
熾を飛ばしたいのは出来るだけ遠く。と、スコップで品を傷付けぬよう
デリケートな熾飛ばしが続きました。
九谷チームがどうしても外せない用があり、一度 九谷に戻ってとんぼ返り。
その間の夜の焚きを任されたのが私で、責任重大でしたが
今まで色々なところで焚きを勉強させて頂いた事で
特に不安は無く、焚き手をローテーションしながら
若干 被せ気味で還元をキープしつつ、温度管理しました。
maayaさん が見学したい。と一緒に来てくれた事もあり
九谷チームの穴を埋める、急遽応援に来て下さったメンツも集まり。で
酒を片手に陶芸話です。
先の海南窯 ( 仮 ) で焼成した maayaさん のぐい呑み。
窯出ししたその場でツバをつけて GET しました。
練り込みが内と外にキッチリと効いていて
見込みも灰が溜まり、良い景色となっています。
ワインを美味しく頂けました。
九谷チームが戻り、焚き手を代わって風呂に行ったり
お昼の買い出しに行ったり…眠りコケたり。
皆で焚きを繋ぎます。
疑問や問題が出た時、その場で知恵を出し合い
解決に向けてあれやこれやと窯談義です。
103時間 経過後、私の 2本目 の引き出しです。
火床 3列目 あたりに置いた品で、さすがに 1本目 と比べると釉の厚みは劣ります。
釉がどれだけ動くかな ? と、持ち上げてしつこく保持しましたが
さほど動いている様子が見られなかったので、引き出す事にしました。
粘り過ぎたせいか、棒と品がくっついてしまいました。
トングで押さえてもらい、半ば強引に引き剥がしました。
棒が離れる時に飴状の釉が伸び、口元に尖ってしまったので
これはイケてねえ。と
バーナーで炙り、一体化させる事にしました。
もはやガラスの世界ですね。
これにて
今回の焼成での私の品の引き出しは終わりました。
一箇所 口元が歪んでいるのは
熾に押され、お隣の蹲に寄りかかっていたせいです。
こういうのも薪焼成の面白いところですね。
炉内で粘ったものの釉に厚みが無く、胴あたりに動かす事は出来ませんでしたが
足下の釉は…こってりと厚みを持っています。
九谷チームの引き出しも次々と終わり、全ての引き出しが終わりました。
ヤナイくんの強制水冷もバシッと決まりました。
釉に細かなクラックが入り、青味が強まり
あたかも
深海から引っ張りだされてきた品のような雰囲気となりました。
初めて見ましたが…水冷も楽しそうです。
さすがに黒土では…ばっちり割れてしまいそうですけれど。
今回はマットな質感を狙う。というのが焼成テーマで
その後はトップを 1190℃ とし、 ±20℃ をキープしつつ
熾を溜めては配る。というミッションに入りました。
空気口前の組み方を変え、バランスのとれるポイントを探ります。
こうして
オチル大明神の見守る中、最後の 7時間 をその温度帯でキープし続け
ほぼ予定通り、 125時間 に及ぶ窯焚きが終わりを迎えました。
焚きに関わった人、 1本ずつ 薪を手にし
1人ずつ 順に投げ込みし、大くべはせずに終了。
火の神様に成功と安全とを再び祈願。
2礼2拍1礼 を済ませました。
薪焼成は炎との戦いだ。なんて聞いた事がありますが
最近になってそれがよくわかってきた気がします。
私の中での捉え方は少し異なり
炎と戦うというよりも
炎と共闘し、品を焼き上げると言った方がしっくりとくる気がしています。
窯もそう
炎もそう
人が尽力するのもそう。
窯も炎も人も
結局のところ
品を焼く為のただの道具であり
窯と炎を操作するのは人で
対峙すべきは品である。と
ただの言葉遊びではありますが、そう感じます。
準備から焚き、火止め…後片付けと
手間も時間もお金もかかる薪焼成ですが
その面白さは格別で
それを通じて出会う人々との関わりも、また格別。
これからも続けていけるよう
……稼がなくては
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by t_durden | 2013-04-24 00:52 | 薪窯 : Wood-fired kiln